ブルーベリーの低温要求量は系統や品種によって異なるが、屋外で必要以上に低温に晒す行為はただ休眠期間が長いだけで、生長のチャンスを減らすことに繋がる。逆に言えば、最低限しか休眠させないよう室内等で管理することで促成栽培が可能となる、ということだ。早く大きく育てられれば、苗の生長を最優先する1年生~2年生にとっては特に有効な手法となる。
最低限必要な低温時間を「いつから」もしくは「いつまで」確保すればよいか知っておく必要があるものの、遭遇する低温期間は栽培する地域によってマチマチ。自分の地域はいったいどういう環境なのだろうか?
ということで、「当地の過去の外気温の推移を調べてみた」の巻。
1.ブルーベリーと休眠(低温要求)の関係
ブルーベリーが冬季間休眠することは花芽の生長に役立つらしく、発芽不良や花芽不足にならないためにも一定期間低温に晒す必要がある。低温とは「気温7.2℃以下の環境におかれること」で、低温要求量とは「低温期間の積算(時間)」である。
例えばラビットアイ系のティフブルーの場合、低温要求量は550時間~750時間とされている。これは、冬季の間、7.2℃を下回る時間数が積算で550時間~750時間必要なんだ、と読む。
毎日24時間ずっと7.2℃を下回る日が続けば1ヶ月あまりで到達するし、夜の間(半日)だけとなれば最大で2ヶ月強かかる計算となる。
2.当地の低温期間(時間数)の調査
当ブログの栽培地域は、北陸地方にある石川県能美市です。冬は降雪があるもののそれほど積もらない地域だ。冬とはいえ、7.2℃をずっと下回っているわけじゃないので、毎月どのくらいが低温なのかを調べてなくてはならない。
2-1「気象庁:過去の気象データ検索」から数値を拾う
便利なことに気象庁のサイトでは、日本の各都市における気象データを過去分から公開しています。以下は平成28年11月1日の1時間ごとの気象データです(ルートは、ホーム > 各種データ・資料 > 過去の気象データ検索 > 1時間ごとの値)。
今回の場合、必要な情報は時間と気温だけです。実は、能美市は石川県でも弱小市の部類に入るため都市単体データがありませんが、隣接する小松市のデータで十分代用可能です。
こう見ると、あらゆる気象データがデータベース化されていますね。ビッグデータ時代を実感します。
2-2「過去の気象データ」の一括ダウンロード
一通りコピペしてから気づいたのですが、1回ごとの制限はありますが、一括ダウンロードできます(ルートは、ホーム > 各種データ・資料 > 過去の気象データ・ダウンロード)。1日ずつコピペするよりずっと早いです。
データを取得する期間は、11月~4月に限定しました。他にも7.2℃を下回る日はあるかもしれませんが、だからって実際の栽培では関係無いからね。
一応これで「当地での低温期間(時間数)のデータ」が入手できました。次は得られたデータを加工し検討してみます。
3.ブルーベリーの休眠期間短縮についての検討
休眠期間を短縮するためには、「いつまで休眠させるか」もしくは「いつから休眠させるか」をコントロールする必要があり、それは温室・露地間の移動タイミングがキーとなる。得られたデータを加工して、「当地での月ごとの低温時間数」を集計してみると次のようになった。
当地(石川県小松市)における月ごとの低温時間数
- 11月 :126 時間
- 12月 :433 時間
- 1月 :739 時間
- 2月 :556 時間
- 3月 :540 時間
- 4月 :174 時間
- 合計 :2568 時間
3-1「いつまで休眠させるか」
上の結果は2010年(平成24年)11月~のものですが、当地では7.2℃以下の低温期間が2500時間を越えていることがわかります。
先のティフブルーが必要な低温要求量(時間)は550時間~750時間なので、12月から休眠期に入ったとしても、1月末には低温要求量を満たせている計算になりますね。つまり、2月1日以降は温室に移し休眠から目覚めさせ、さっさと花芽を生長させるのが促成栽培的には良い気がします。
温室を作るためのコストは無視するとして、温室を使った促成栽培で最も効率が上がるパターンは一気に低温積数を稼げる「とにかく寒い地域」ということになります。
3-2「いつから休眠させるか」
逆に、いつから休眠させるかが重要な場面もあるでしょう。
幼苗のシュートやサッカーをもう少し生長させるために温室に移行させ、残る低温期間が低温要求量ギリギリとなるまで休眠させないパターンもあるかもしれません。
また、他サイトを巡回していると、花芽をつけさせない挿木苗なんて場合は低温に遭遇させる必要がそもそも無いのかもしれません。管理できる室内において新梢伸長に専念することができます。
4.非農地ブルーベリー栽培の方向性
鉢植栽培の利点を活かすなら、促成栽培を行い収穫時期を前倒しにすると良さそうですが、早くなったところでラビットアイ系のブルーベリーの食味はハイブッシュ系に適わないような気がするため、出荷でもしない限りは僕自身は促成栽培のメリットを享受できそうに無い。
そういう意味で、休眠時期をコントロールすることで次のような可能性が考えられる。
ひとつは、早めに休眠から覚醒させることで、「サザンハイブッシュ系をとにかく早く収穫にこぎつけるか」、もう一つは、冷蔵庫に保管して開花時期を遅らせることで「優秀な晩生ハイブッシュ系をさらに遅くまで引っ張れるか?」、となる。
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